2015年07月31日

どこにでもいそうなふつうの主婦が刑務所に入るまで(1)

ひさしぶりに法廷傍聴に出かけました。ところは横浜地裁。
なにげなく入室した法廷で思わぬことがおきました。
最初、傍聴席にいたどこにでもいそうなふつうの主婦が
被告人の席に座ったのです。
この事件は道路交通法違反ということで、
軽微な事件だと思っていたのですが、
この主婦、なんとも面妖な過去をお持ちでした。

      *      *      *

平成27年 道路交通法違反

平成27年6月××日 公判(第一回) 被告人質問、証人質問

(1)公訴事実等(その後の公判により明らかになった事実も記載した)
被告人は神奈川県A市在住の四十代後半の主婦。夫、長女、長男、義父と暮らしている。
被告人は平成27年3月30日、自動車運転免許が取消されているにもかかわらず、自動車の運転をした。道路交通法違反(無免許運転、一時停止義務違反)。

20150729003saibankan.jpg裁判官

被告人には前科がある。
一回目は業務上過失致死罪にて罰金刑。発生年月不明。病院の駐車場で高齢女性と衝突し死なせたというもの。被告人には女性と衝突したという認識はなかった。車両には鑑定において傷がないとされたが、事件から五年経ったころに警察から連絡があり、その罪を再度問われ罰金刑となった。
二回目は自動車過失運転傷害罪。平成21年7月発生。交差点を右折しようとしたところ、後から歩行者が追いかけてきて右足を轢かれたと訴えられた。その場で被害者に訴えられたので、なにかが起こったという認識はあるものの右折車の左側から近づいて来た人が轢かれたというのは不自然だと感じた。しかし特に強い反論はせず、罰金刑となった。
二回目の罰金刑の後、被告人の自動車運転免許は取消となった。
三回目は無免許運転。平成23年11月16日発生。
四回目は無免許運転。平成24年3月15日発生。
五回目も無免許運転。平成25年11月27日発生。起訴された。その後、再犯防止のために当時の車両フィアットは廃車とした。初公判は平成25年12月18日であったが、その直前に娘の運転免許取得(予定)を理由にダイハツココアを購入している。
裁判の判決言渡しは平成25年12月27日であり、執行猶予付き有罪判決。
判決言渡し日の前日12月26日に被告人の家族は、B市から被告人の夫の両親が住むA市に転居。偶然同じ日に被告人の夫の母が死去。
今回の公訴事実は、六回目の罪であり、四回目の無免許運転となる。また三回目の無免許運転による刑の執行猶予期間中でもある。

(2)被告人質問
平成27年冬から春にかけて、被告人はとても苦しい時期を過ごしていた。
平成25年冬A市に転居して以来、義父(被告人の夫の父)の介護に追われていた。義父は元学校長であり、頑固であった。右目を失明していて、一時は「要介護3」の認定を受けていたが、退院後は被告人が毎度の食事を用意し、トイレの介助をするなど献身的に介護をした結果、病状等は快復しとても元気になった。ところが平成26年秋に義父の「要介護3」が取り消され、いきなり「自立」となった。以前はヘルパーに頼めていたことが急にできなくなり、忙しさはかえって増えた。なにより義父と四六時中家の中で二人一緒に過ごさねばならないことが重い負担となった。
それに加えて、長女の進学の問題が重なる。長女は当時短大に通学していたが、四年制大学への編入について被告人は長女と口論を繰り返した。もともと長女へ短大を勧めたのは被告人ということもあって、長女に責められることになった。

20150729003hikokunin.jpg被告人

長男は当時中学三年生で、高校受験に忙しい時期でもあった。
このような忙しく苦しい時期にもかかわらず、夫は仕事を理由に自分の親の介護も含めて家庭の問題にきちんと向き合ってくれなかった。
そんな中、友達のもとへ化粧品を届けるためについ自動車を運転してしまった。
現在は夫も家庭を顧みなかったことを反省してくれている(証人質問)。長女は四年制大学に、長男は高校に無事合格した。「それが私はうれしくて……(涙)」


      *      *      *

驚きました。この主婦、過去に人を一人死なせているのです。
話を聞く限り、かなり信憑性に乏しいのですが。
だって傷害過失致死で罰金刑って、ふつうじゃないですよね。
ただ、本当にいろいろな問題が重なっているときに
事件が起きてしまったようで。
(つづく)
posted by ひろとも at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 法廷傍聴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする